思いっきり、大地を旅行する

スペイン、スイス・オーストリアを越えてドイツ、イタリアから、モロッコに帰ってきた。

モロッコのイミグレーション、ほんとうに適当すぎて(目開いてない時々)ナチュラルに100人に一人は不法出国していそう(帰りはフィレンツェから飛行機)


ゼミの先生がドイツに学会でいらしていると聞いたので、ドイツまでいこうか迷った挙句、やっぱり遠いな…と思いバルセロナ・ミラノ・フィレンツェ、と回る予定でいた。が、バルセロナにいるときに、
 
研究会の先生よりメールで、
「神のお導きによって、9月7日の正午にミュンヘン中央駅の一番線スターバックスの前に立つことになるでしょう。きっとあなたは救われます。」という謎すぎる神の御告げメールが届き、(しかも後に、「スターバックスは一番線にあらず、11番線也。神も過ちを犯すことあり。」との神のあやまちメールが来る)

二日後の夜、夜行列車にのりミラノからミュンヘンへと、車掌を酒で買収してコンパートメントを一人で占領し、オーストリア人の脂ののった割とイケメンな27歳のその車掌と生ハムをつまみに、ミラノの白ワイン・フルボトルを空けながら向かいました。(ああ、どうかこの邪教徒をどうぞ神様お許しください、)

そういえばバルセロナからミラノ、ミラノからミュンヘンまでバスと夜行列車で行ったが、普通にLCCで行ったほうが安い(80パーセントオフくらい)ということがわかったりしていたが、陸路で行って見るということが、今回は意義があることだと思うんでいいかなと思うことにすることにした。やはり大地のことを知るには、徒歩が一番だと思う。陸路は重要だ。

 

バルセロナのチョレギサラダ(サグラダファミリア)、良かった。色の入り方が素晴らしい。外から見ると泥の塊みたいであるのに中は別世界というか、現世ではない感じであったのが良かった。地面から生えてきたような「土感」。鍾乳洞の石筍のような感。教会の建物自体が生き物のような感。

カサ・ミラの奇妙な煙突群はトルコのカッパドキアを思い出した。普段博物館とか美術館とかそういうのはたったの5分で見終わる人なのだが(実際ピカソ美術館は10分で見終わった)、ガウディの建築物だけは、まともにガイドを聞いて、まともに見た。

グエル公園やグエル邸、名前ももう忘れてきたけど、結構色々見た。入場料アホ高いがこれは払う価値があると思った。ガウディの建築を見ていて思ったのは、彼は日常を3メートルくらいオモシロク、したかったのだろうなと個人的には思った。

夜にはフラメンコと闘牛を見た。二つに共通していたのは、「魂か命がかかっている」ということだな。フラメンコで特に驚いた点は、あんなにもタップの音が激しいとは思わなかった。すごい迫力だな。あの下に頭を置いたら一発で頭蓋骨が粉々になりそうだ。フラメンコダンサーの情念、源氏物語なら誰に近いのだろう。 情念で惚れた男を踏み殺す・・・ 激しすぎる!

違う夜にはグエル邸の屋上で行われたナイトコンサートに行った。サングリアをたらふく飲みながら聴くスペイン風のジャズもどきもいいもんだ。ハモンセラーノもイベリコ豚の生ハムも毎日4回は食べた。多分一年ぶんの生ハムを食べた。ある朝珍しく髪をといたら、髪の中からハモンセラーノの端くれが絡まって出てきたほどだった。バルセロナでアーモンドやくるみをたまたま買ったら、味気がなく、食えたもんじゃなかった。やはり中東のナッツが一番ですね。ただモロッコはカシュー、アーモンド、くるみは美味だが、ピスタチオはそこまで。やはりイランのピスタチオが最高。イランではルマール、ざくろも非常に味があり美味である。搾りたてのイランのザクロジュースは、喉を通ったその瞬間に、目の奥が痺れるほど味がある。モロッコでも最近になってルマールが出始めた。パコっと開けるとワラワラと出てくる「小さな秋」の到来。あけぼのぐれの風からは秋の匂いがするようになった。

スペインは、太陽のあるところ vs 太陽のないところ(闇 日陰) 、「赤」と「黒」 →「太陽、情熱、血、生きる」と「闇、死」などを意識していると、よく見えてくる気がする。ゴヤもこの点から見ると面白い。ピカソは、思いっきり生きたし、死を描いた。思いっきり死んでいった。スペイン人らしい画家なのかもしれない。

ただ、モロッコからヨーロッパの方に渡るとどんなに気をつけていても、30万倍くらいの速度でお金がなくなっていくので末恐ろしい。

フィレンツェはまあ、フィレンツェであった。回るのめんどくせえとか思って適当に美術館を回っていると「あ、これ教科書で見た!」的なのが出てきてびっくりする。フィレンツェでは文房具屋さんというか紙屋さんに行きまくった。パピロ?というのかなぁ、便箋や封筒、紙を売っているところ。フィレンツェのどんな美術品、工芸品、教会よりも、この、紙の模様に魅了された。た、だ、魅了されすぎて写真を取るのも、物自体を買うのも忘れてしまった。将来の邸宅の書斎の机はフィレンツェのこの紙をモチーフにしようと決めた。ちなみに中庭はモロッコ式、キッチン器具に関しては、調理器具はモロッコとイタリアと日本、皿はモロッコとベトナムとタイ、ランプはトルコ、絨毯はイラン。。。。。と詳細に決まってありつつある。カフェは併設で、メニューも決まりつつある。そのためなのか世界各国でスパイスや調味料を物色してしまう癖がある。

この旅行で、私すげぇな、と思ったポイントは、約9日間の旅程で、ベッドで寝たのが4日しかないという中で、ときには72時間起きっぱなしでも元気に観光していたところだ。
ちなみにバスターミナルや夜間移動の際の治安対策としては、パスポートや大金は全てパンツの前側に入れうつ伏せで寝る、最悪の予備の日本円と100ユーロ札はケツの谷間に入れる(なお胸に谷間はないわけでなく寄せればある)という良策をいつもの通り取っていたので、スリなどにはあわなかった。

「人生一度きり、寝るのは来世で。」をスローガンに進めた今回の旅行は、
ミラノの最後の晩餐よりも、フィレンツェのヴィーナスの誕生よりも、バルセロナのサグラダファミリアよりも、


初のミュンヘンで救い主こと大好きなゼミの先生と大好きなゼミの仲間・マリア様みたいな院の先輩と共に、遠路はるばる「天上天下唯我独尊!」と飲んだ瞬間に叫んだほど美味しいビールと白いソーセージとプレッツェルを囲めたのが、とてもとてもとてもとてもとてもとっても幸せであった。

ちなみに白いソーセージをスーパーで買って持ち帰ろうと思ったら、モロッコで気づいたら発酵していた。思い出はテイクアウェイより脳内イートインだ。

 

今日のまとめ:

1.地に足をつけておくこと。空をあえて飛ばず、大地を踏みしめる。噛みしめる。

2.夜行列車の車掌は酒次第で買収できる。ただし可愛くな。

3.建物が生き物。うねりと躍動。全力で生き、全力で死ぬ。血と太陽。手をかざせば見えるのは黒ではなく、赤。つまり生だ。

4.フィレンツェの紙。美しさのカタマリ。書斎へGO

5.人生一度きり、寝るのは来世で。©️

6.「天上天下唯我独尊」味のドイツビール。優しさ、それはまるでお母さんのおっぱいのような白いソーセージ。だがそれは脳内イートインでテイクアウェイできない。